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マスターのVHSコピーを確認した我々は、タラコ・キューピーの行進を目の前にした少女のように、呆然とするしかありませんでした。
“現存するベスト・マスター”…との言葉とは裏腹に、でっかいゴミが随所に! …いや、もちろんディティール部分はきれいなんですけどね。コーレイの髪の毛1本1本も判別できますし、キャラクターの肌や、背景のエッジもシャープです。
製作当時より30年近く経っていますし、16ミリプリントからのテレシネということで、ある程度はやむをえないのですが、デジタル・テレシネしたおかげで、画質がクリアになったぶん、フィルムのゴミも目立つ結果になっています。
無論、ゴミ消し決定!
早速、デジタル修正技術に定評のある大手スタジオに相談です。その結果、観ていて違和感なく修正するためには、前後のコマが同じ(つまり、静止したシーン)であることが前提ということになりました。アクションの激しい「特捜班CI☆5」では、コマ単位でカメラも動いているシーンがほとんどであり、その意味でも、すべてのゴミを完璧に修正することは現実的に不可能だと判明しました。だからといって、そのままにしておくつもりはありません。そこで、スタジオとも打ち合わせを重ね、修正すべきゴミ・修正可能なゴミを絞込みました。
ほんの一例ですが、実際に修正した例を、特にフィルムのゴミが目立ったエピソード『右手がダメでも左手があるさ』から抜粋してご紹介します。
まずは、アバンタイトルのワンシーン。左がマスターのままの状態で、中央に白い大きなゴミがあります(同じゴミは、イギリスのDVD商品には残ったままです)。
前後のフレームからゴミの箇所にあたる画像をコピーして貼り付けて修正したのが右側(DVD商品の画像は、もちろんこちらになります)。カメラも動かず背景が静止したままだったので、うまく修正できました。
さらにクライマックス、コーレイとドイルの乗った車にカメラが寄るシーン。左のマスター画像には、中央にとんでもないゴミが張り付いています(おそらく、編集の際にプリントの接着に使ったテープの切れ端)。
カメラがズームしているシーンなので、本来は修正を断念せざるをえない箇所ですが、あまりにひどいので敢えて修正を入れています(右写真)。よく観ると修正箇所が分かるかもしれませんが、スタジオの技術を駆使して最大限目立たなくしています。
このように、ゴミの修正を全12エピソードに実施しております。どうしても修正が不可能なゴミが多少残っていますが、イギリスやオーストラリアで発売されているDVD商品よりは、格段にきれいな画面になっています。
さらに16ミリで撮影されたため、場面によって光量が異なり、その結果、色調が変わっている箇所も多々ありました。これについては、“カラーコレクター”という専用のマシーンを使って、色調があまりにひどい箇所を部分的に調整しております。『照準を合わせる相手が問題なんだ!』のアバンタイトルは、イギリスのDVDでは画面自体がグリーンになっていますが、本商品では自然な色調に近づいています。
とりあえず、“現存するベスト・マスター”にさらに磨きをかけた、日本独自の“ベスト・オブ・ベスト・マスター“が完成しました。
ところが、ここから先にさらなる難関が立ちはだかろうとは! もう、いいかげん勘弁してくれ〜!!
以下、次回!!
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